小規模宅地についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し
2013/4/30
 平成25年度税制改正で、居住用宅地の適用対象面積の見直し、居住用宅地と事業用宅地を併用する場合の限度面積の拡大、居住用宅地の適用要件の緩和・柔軟化がなされ、平成27年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用する。 
 一、制度の基本的考え方
 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例は、居住の継続や事業の継続に配慮して、小規模な宅地等の部分について相続税の課税上、その他の相続財産と異なった取り扱いをして相続税の負担の軽減を図る制度である。
 ニ、改正後の制度の概要
 1居住用宅地の適用対象面積の見直し
 限度面積要件について、特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積を現行の上限240uから330uまでの部分に拡充する(新措法69の4A二)。
 2居住用宅地と事業用宅地を併用する場合の限度面積の拡大
 特例の対象として選択する宅地等のすべてが特定事業用宅地等及び特定居住用宅地等である場合には、それぞれの適用対象面積まで適用可能とする。 すなわち、現行(居住用240u、事業用400u)の最大400uの限定併用であったが、改正後は(居住用330u、事業用400u)それぞれの限度面積、最大730uの完全併用に適用を拡大する(旧措法69の4A四)。 
 なお、貸付事業用宅地等を選択する場合における適用対象面積の計算については、200u以下と限定併用のままであるため、他に特定事業用等宅地等や特定居住用宅地等を選択する場合には現行どおり調整計算を行なうこととなり、その場合における調整の計算式は別紙のとおりである(図一参照)。
 3居住用宅地の適用要件の緩和・柔軟化
 一棟の二世帯住宅で構造上区分のあるものについて、被相続人及びその親族が各独立部分に居住していた場合には、その親族が相続又は遺贈により取得したその敷地の用に供されていた宅地等のうち、被相続人、その被相続人の配偶者又はその被相続人の親族の居住の用に供されていた一定の部分に対応する宅地等を特例の対象に追加する(新措法69の4B二イ)。
 改正前は、特定居住用宅地等の特例適用を受けるには、@被相続人と同居していた相続人が当該宅地を相続すること、A相続税の申告期限まで引き続き居住の用に供すること等、一定の要件が必要であったが、問題になりやすいのが二世帯住宅の取扱いであった。 すなわち、二世帯住宅は建築の構造次第では「同居扱いに」なるか否かで相続税に大きな影響を生じることも考えられる。 
 たとえば、一階に両親、二階に長男家族が住む住宅で、内階段で行き来できる二世帯住宅のような場合、各々独立した建物になっていないことから,二階建ての戸建てに同居しているのと実質上変わらないので同居しているものと判断されていた。 一方、独立区分タイプの二世帯住宅は、内階段もなく、玄関も別々で、一階と二階が各々独立した建物としての構造を具備している場合には、以下の一定の要件をすべて満たさなければ同居とは認められていませんでした(措法69の4−21)。
 @居住用宅地上の建物(二世帯住宅等)全部を、被相続人又は被相続人の親族が所有していること、A被相続人に配偶者及び同居法定相続人がいないこと。
 改正後は、二世帯住宅について構造上の要件を撤廃し、建物内部で二世帯の居住用の構造が繋がっていなくても同居扱いとして評価減額の特例を適用する。
 4老人ホ−ムに入所した場合の特例適用について
 被相続人の居住の用に供されていた宅地等で、一定の事由に相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかったものを適用対象となる宅地等の範囲に追加する(新措法69の4@)。
 たとえば、老人ホ−ムに入居したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等は、次の要件が満たされる場合に限り、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして特例を適用する。  
 @被相続人に介護が必要なため入所したものであること。
 A当該家屋が貸付け等の用途に供されていないこと。
 尚、3の二世帯住宅の構造上の要件撤廃と4の老人ホ−ムに入居した場合の特例についての改正は、平成26年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用する(平成25年改正法附則85A)。
 
更正の請求と請求範囲の拡大について
2012/10/19
 平成23年12月の税制改正により更正の請求期間が5年に延長(改正前1年)、また更正の請求の範囲の拡大(当初申告要件の廃止)及び控除額の制限の見直しがなされた。
 一、更正の請求の意義
 更正の請求とは、納税申告書を提出した者が、その申告書にかかる課税標準等または税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったり、又は計算違いなどにより実際よりも納める税額が多すぎたり、還付する税額が少なすぎた場合等に、自己に有利に修正したいと思う場合には、納税者の側から法定申告期限後に、税務署長に対して税額の是正を請求する手続きで、「更正の請求書」を提出することにより行う(通則法23C)。
 税務署長は、更正の請求書が提出された場合、その内容について調査を行ない、納め過ぎた税額があると認めた場合には還付することになる。 この手続きは、税額変更の請求権を行使する手続きにとどまり、それ自体で税額を是正し確定させるものではない。 
 また、更正する権限は税務署長にあるため、税務署長は更正の理由がなければ更正をしないこともあるので留意されたい(通則法23C)。 
 一般的に、更正の請求ができる場合には、@、通常の場合(通則法23@)と、A、後発的事由に基づく場合(通則法23A)との二つの法令が定められているが、原則的取扱いは通常の場合である。
 通常の場合の更正の請求は、提出後の申告について、@納付税額が過大であるとき、A純損失など欠損金額が過少であるとき、B還付税額が過少であるとき等は、原則として、その法定申告期限から1年以内(改正後5年)に限り、税務署長に対して、その申告した課税標準等又は税額等について減額の更正を求めることができる。
 二、平成23年12月税制改正
 今回の改正で、平成23年12月2日以後に法定期限が到来する国税について、二つの改正が行われた。
 1、更正の請求期間の延長
 納税義務者が法定外の手続きにより、非公式に税務行政庁に対して税額の減額変更を求める、いわゆる「嘆願書」という実務慣行を解消するとともに、納税者の救済と課税の適正化とのバランス、制度の簡素化を図る観点から、更正の請求の期間を延長するとともに、課税庁が増額更正できる期間を延長する。 これにより、基本的には納税者の修正申告・更正の請求、課税庁による増額更正・減額更正の期間はすべて一致することとなる(図一,二参照)。 このことから、納税者の減額請求期間と課税庁の増額更正期間とを整合させる結果として、所得税に係る増額更正処分が3年から5年に延長されていることにも留意されたい。
 2、更正の請求の範囲の拡大
 従来より、納税者の自由な意思による判断だけではなく、単なる不注意による誤解、錯誤、法の不知等を基因とする場合もあり、更正の請求によって救済が認められる範囲について、厳格に運用しすぎているのではないかとの指摘もあり、これを踏まえて、適正かつ公平な税負担という観点から、当初申告要件や控除額の制限が見直されることになった。
 @、当初申告要件の廃止
 改正では、例えば「受取配当金等の益金不算入(法法23)」や「所得税額の控除(法法68)」のように当初申告要件が廃止されたものと、「中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除」のように当初申告要件が廃止されないものがあることにも注意を要する。 その理由について、@インセンティブ措置(例:設備投資に係る特別償却)A利用するかしないかで、有利にも不利にも操作可能な措置(例:各種引当金)については、納税者に最も有利とすることができる選択権を納税者自身に付与するものであり、課税の公平が確保できなくなることから、それぞれ更正の請求により事後的に適用を認めることは、適当でないと指摘している。
 A、控除額の制限の見直し
 また、控除等の金額が当初申告の際の申告書に記載された金額に限定される「控除額の制限」がある措置について、改正後は確定申告書等だけだはなく、修正申告書や更正請求書に添付された書類に控除限度額等として記載された金額を基礎として計算した金額が限度とされた(法法69J)。
 
固定資産税の清算金の課税上の取扱い
2012/8/1
不動産売買において、引き渡し日を基準に買主が売主に支払う固定資産税の清算金は、実務上は損金の額に算入される費用ではなく、売買の対価であると解されていることから、当該不動産の取得価額に算入されることになるので留意されたい。
 一、固定資産税の意義
 固定資産税は、固定資産(土地、家屋及び償却資産)自体の有する価値(収益性)に着目し、その資産を所有することに担税力を見出して、その資産価値に応じて課せられる物税であり、その賦課期日である毎年1月1日において土地、家屋及び償却資産(以下、固定資産という)を所有する者に対しその固定資産の価格(適正な時価)を課税標準として、その固定資産所在地の地方公共団体が課する税である。 また、固定資産税は応益負担の原則に立脚した償却資産課税台帳に所有者として登録されている者(台帳課税主義)による税であり、当該納税義者は原則として、固定資産の所有者である(地法343@)。
 二、固定資産税の一般的な取扱い 
 法人が納付する租税公課のうち損金の額に算入されないものについては、法人税法第38条から第41条までにおいて規定されているが、これらの規定において定められていない租税公課については、法人税法第22条第3項第2号の規定により損金の額に算入される。 
 賦課課税方式による租税には、固定資産税、不動産取得税、自動車税、都市計画税等があるが、これらの租税は、原則として賦課決定のあった日の属する事業年度において損金算入される(法基通9−5−1(2)。
 ただし、法人がその納付すべき税額について、その納期の開始の日又は実際に納付した日の属する事業年度において損金経理をした場合には、損金の額に算入される取扱いとなっている。
 三、不動産売買における固定資産税の清算金
 不動産売買において、一般的には売買代金とは別に、未経過固定資産税相当額を固定資産税の清算金として授受しているのが慣例となっている。 未経過固定資産税相当額を固定資産の取得価額とするか、租税公課として損金算入とするかについては、二つの見解(非対価説と対価説)がある。
 @非対価説
 購入者が負担した不動産の固定資産税等に相当する金額は、経済的な実質を考慮すると、まさに固定資産税そのものであり不動産を維持管理するための経費であるので、損金の額に算入されるべき費用であり、法律上の納税義務者でないという理由だけで経費性のないものとして固定資産の取得価額とすることは、実質課税の原則に反するものであるとする考え方である。
 A対価説
 これに対し、購入者は未経過固定資産税相当額を課税権者である地方公共団体に納付するのではなく、譲受日から年末までの未経過期間において、固定資産税の負担なしに所有することができる不動産の購入対価の一部として譲渡者に対して支払うものであることから、未経過固定資産税相当額は取得した資産の取得価額に算入されることになる、とする考え方である。
 このことついて、法人税取扱通達には、未経過固定資産税等の取扱いについての定めがないものの、消費税通達では、固定資産税等について譲渡の時において未経過分がある場合で、その未経過分に相当する金額を当該資産の譲渡について収受する金額とは別に収受している場合であっても、当該未経過分に相当する金額は当該資産の譲渡の金額に含まれるのであるから留意する(消基通10−1−6)として対価説の見解を示している。
 また譲渡税での取扱いについては、固定資産税は1月1日時点の所有者が納税義務者であって、契約当事者間で固定資産税の清算をしたとしても未経過分として清算する金額は、固定資産税ではなく固定資産税相当額の売買対価の一部であり譲渡所得では収入金額になると判示している(国税不服審判所:平成14年8月29日)。 したがって、買主にとっては、租税公課として必要経費にはならず売買の対価として取得価額になり、それが建物への固定資産税清算金であれば消費税の課税対象になることにも留意する。
 ワンポイントアドバイス
 固定資産税清算金について、固定資産税は保有税という観点からは当該資産について原価性はなく、これを固定資産税相当額と見る限りは、固定資産税に準ずるものとして原価性なしと考えることが妥当であるように思料されるが(大江晋也稿:固定資産を巡る税務上の取扱い事例)、実務上は、課税庁の有権解釈としては租税公課として損金処理されるのではなく、売買の対価として(対価説)取扱われているので留意することが肝要である。
 
非適格現物出資によるDESの手法と改正後の税務上の取扱い
2011/11/8
 非適格現物出資のDESにより債務を現物出資で受け入れて新株を発行する場合において、平成18年会社法制定に伴う法人税法の改正後は、債務の時価により資本金等の額を認識することになることから、債務者の債務の額面金額より時価相当額が低いときは、債務消滅益(債務免除益)が計上される。
 このため、債務消滅益以上の繰越欠損金を有している場合を除き、課税所得が生じるので留意されたい。
 一、DESの概要とその方式
 DESとは、債務者の負債(デット)が資本(エクィティ)に交換(スワップ)することをいい、債権者が債務者の経営再建支援のために債権の一部又は全部を債務者の株式に交換する債務の株式化である。 これにより、債権者は債務者に対する債務免除を行わずに債務者の債務を削減することができる手法であり、債権者は債権を株式と交換する制度である。
 一方、債務者は借入金が消滅することにより利息の圧縮等を図られ資金繰りの改善が期待できるほか、特に中小法人においては、同族会社のオーナーをはじめ利害関係者からの借入金についてDESを活用することによって自己資本比率等の財務体質の改善を行うことができる。
 実務上は、現物出資について、適格現物出資(資産の移転を簿価譲渡として取扱う:法法62条4)及び非適格現物出資(資産の移転を時価譲渡として取扱う:法法22条)のニつの方法がある。 適格現物出資の要件としては、@現物出資法人と被現物出資法人との間に完全支配関係があり、Aその完全支配関係が継続することが見込まれる場合、B共同で事業を営むための現物出資として政令で定める場合であるが、それ以外の場合は、非適格現物出資と判定されることになる(法法2条12の14)。
 二、金銭債権の評価と平成18年度法人税法改正の取扱い
 DESを行う場合には、債権の金額をいくらで評価して株式化するかという問題が生じる。 一般的には、債権の額面で評価する券面額説と債権の時価で評価する時価評価説があるが、平成18年度法人税法改正により、新株発行において増加する資本金等の額は、払い込まれた金銭の額及び給付を受けた金銭以外の資産の価額(金銭債権の額面金額ではなく時価相当額という意味)であると改められた(法令8条1項1号)。 
 このため、DESの場合における資本金等の額の増加額は、金銭以外の資産の時価相当額となり、適格現物出資を除き、時価評価説が採用される。
 三、改正後の税務上の取扱い
 1、債務者の税務
 会計上、券面額説に基づく処理をしている場合には、改正後は、適格現物出資を除き、時価評価が強制されたため、以下の税務調整が必要となる。 図参照
 2、債権者の税務
 債権者が法人の場合において、債権を現物出資することにより債務者の株式を取得した場合は、適格現物出資を除き、その取得時の債権の価額(時価)で受け入れることが必要である(法令119条1項2号)。 
 したがって、取得した株式を時価で受入れ債権譲渡損が生じたときは、税務上、寄附金課税の問題が生じる。 
 ただし、子会社等に対して債権を有する法人が合理的な再建計画等の定めにより行われたDESにおいては、債務者の株式を取得した場合におけるその株式の取得価額は、その取得時における給付をしたその債権の価額(時価)となることが明示されている(法基通2−3−14)ことから、債権譲渡損が生じたときは、損金の額に算入される。
 また、債権者が個人の場合において、金銭債権は譲渡所得の基因となる資産に該当しないため(所基通33−1)、雑所得の損失として損益通算ができない。
 活用のポイント
 債務者である法人は、債務を返済せずに負債を減少させ、財務内容を改善させることができる。
 ただし、債権者が第三者である場合は、その第三者の支配力が高まる可能性があるので注意を要する。
 債権者は、回収の見込みのない債権を債務者の株式として取得することにより、債務者である法人の支配力を高めることができる。 同族会社のオーナーが債権者である場合は、会社に対する貸付金を保有したまま相続が発生すると、財産評価上額面金額による評価となるため、貸付金についてDESを行うことにより、相続財産の評価が下がる効果を期待し利用されるケースも散見される。 その際、債務者である同族会社は、債務消滅益以上の繰越欠損金を有している場合を除き、課税所得が生じるので、資金計画上事前に検討することが肝要である。
 
駐車場に賃貸住宅を建築した場合の税務上のポイント
2011/6/1
 相続税法上、駐車場の場合には更地の評価により相続税が課税されますが、当該用地に賃貸住宅を建築した場合は、土地の貸家建付地評価による減額、さらにその敷地については小規模宅地等の特例(50%減額)と貸家の評価による減額の二つの節税効果があります。
 一、不動産の最有効活用の判定
 平成23年度税制改正案では、今後相続税の基礎控除の引き下げ、税率構造の引き上げ等増税の方向の内容となっております。 このようなことから土地所有者や資産家にとって、土地は単に「所有」するだけではなく、増税時代に対応するため「負の不動産」にならないように土地の有効活用をすることによって、老後の資金対策等のため、又安定した収益力を確保するためにも戦略的に考える時代が到来したといえます。 
 有効活用の対策の一つとして、駐車場に賃貸住宅を建築した場合の留意すべき点を要約すると以下のとおりです。
 @、土地の特性(用途地域・立地等)から賃貸住宅が最有効の利用であるか否かを検討します。
 A、事業の資金収支計画は空室率等を考慮し、収入は厳しく費用は多めに立案します。
 B、事業の資金調達計画は所得税等の節税対策の効果と資金収支のバランス(特に借入金を返済しても生活費が確保できるか否か)を検討します。
 C、相続税対策と納税資金対策の最適な手法をシミュレ−ションします。
 以上の留意点等を検証し、駐車場に賃貸住宅を建築した場合、最有効活用であるか否かを判断することになります。
 二、賃貸住宅建築の税務上のメリット
 土地の特性等から賃貸住宅建築が最有効活用である場合において、建築した場合のメリットは以下のとおりです。
 @、相続税は、駐車場の場合には相続評価上更地の評価により相続税が課税されます。
 しかし、当該敷地に賃貸住宅を建築した合には、その宅地は貸家建付地の減額(評基通26):「自用地の価額−(自用地の価額×借地権貸割合×借家権割合×賃貸割合)」また貸家の評価は建物評価による減額(評基通94):「借家権の目的となっている自用家屋の価額−(自用家屋の価額×借家権割合×賃借割合)」の算式で評価することにより二つの節税効果があります。
 A、また固定資産税は、駐車場については通常の宅地として固定資産税が課税されますが、当該敷地の上に賃貸住宅を建築した場合、住宅用地については、一戸当たり200uまでは小規模住宅用地として、固定資産税は課税標準となるべき価格の1/6(地法349条3の2A)に、都市計画税も課税標準となるべき価格の1/3(地法702条の3A)に軽減されます。 また、当該新築賃貸住宅については、その固定資産税額のうち、居住用に対応する税額(120uまでに対応する税額)の1/2に相当する金額が、新たに固定資産税が課される年度から一定期間にわたって減額されます(地法附則15条の6)。
 B、不動産取得税についても同様に、当該一室あたり部屋の広さ(床面積50u以上240u以下、集合住宅40u以上)の場合には軽減を受けることができます(地法73の条14)。
 三、不動産管理会社の活用
 不動産管理会社を設立し、当該賃貸住宅を当該管理会社に一括借上方式により管理料を支払うことにより同族役員等への給与の支払いが可能となります。 その結果、被相続人から相続人への金融資産の移転が実現し、相続税の納税資金に役立ちます。 具体的には、株主はオ−ナ−やその配偶者が株主ではなく、子供を中心とした株主構成とします。 
 また、当該管理会社に建物を時価で譲渡し、不動産保有会社として相続税の節税を図る方法もあります。 その際、当該土地についての土地賃貸借は使用貸借ではなく賃貸借とし、「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出します。 この場合の地代は固定資産税の2〜3倍程度とします。 その結果、建物譲渡後の当該敷地の相続税評価は借地権割合が仮に60%であれば、「自用地評価額×82%」からその敷地は貸付地として評価され「自用地評価額×80%」の土地の評価減額になります(二@参照)。 但し、当該敷地の減額部分(20%)に相当する金額は、当該法人の株式を評価する際に資産として計上することになるので株式の評価額が増加することになります。 このため、この場合は更に資本の出資にあたっては子等が中心となって株主構成とすることが大切です。 その際、子に出資金がないときは、出資金相当額の金銭贈与を行ない、資金の出所を明確にしておくことも重要です。 なお、借地権割合によっては当該敷地の評価額が上がる場合もありますので総合的な検証をする必要があります。
 四、投資不適格用地の場合
 また、当該駐車場が投資不適格用地である場合には以下のことを検討します。
 @、当該用地を売却し、より有利な収益性のある資産の組替えを検討する。
 A、当該用地を現状のまま保有し、将来投資適格用地になるのを待つ。
 B、相続の際、資産売却が有利か、物納が有利かを検討する。 すなわち、売却した場合の手取り額が物納価格を上回るか否かで判断します。 なお、物納の審査期間は原則3ケ月以内に短縮されたため(相法42条AB)、周辺の土地利用状況等を考慮しながら判断することもポイントになります。
 
清算中の期限切れ欠損金額の算定方法
2011/1/11
 清算中の事業年度において損金算入の対象となる期限切れ欠損金額は、当該事業年度における法人税申告書別表五(一)の「期首現在利益積立金@」の「差引合計額31」欄に記載されるべき金額がマイナス(Δ)である場合のその金額から、当該事業年度に損金の額に算入される青色欠損金額又は災害損失欠損金額を控除した金額となる。 但し、損金の額に算入することができる期限切れ欠損金額は、当該事業年度の青色欠損金額等の控除後の所得金額を限度として損金の額に算入する。
 一、会社が解散した場合の課税方式の改正
 平成22年度の税制改正により、清算所得課税制度が廃止され、平成22年10月1日以後に解散する法人の清算中に終了する事業年度の所得金額は、各事業年度の所得に対する法人税が課されることとされ、財産法から損益法に改められた。 
 改正前の制度では、内国法人である普通法人又は協同組合等が解散した場合には、清算所得について清算所得に対する法人税が課され(旧法法5、6)、当該清算所得の金額は、その残余財産の価額からその解散の時における資本金等の額と利益積立金額等との合計額を控除した金額とされていた(旧法法93@)。 清算中の会社の本来の目的は、債権の回収や債務の弁済などを行い、残余財産を確定させることにあるので、解散前のように対外的な事業活動を行うことは原則できない。 
 従前は、解散前の事業年度については会社の事業活動の成果である所得に対して課税する方式、解散後は清算所得に対して課税する方式が採られていたが、現実には解散決議後長期間経過しているにも係らず清算結了していない会社や、解散決議後も従前と同様に事業活動を継続している会社も実務上は多々存在する。 また、解散決議後も清算が結了するまでは、いつでも株主総会の特別決議で会社を継続すること、又解散前の会社に戻り事業活動を行なうことも可能であることから、解散の前後で課税方式を変更することが必ずしも合理的とは言えないのが現状に於ける問題点でもあった。 このようなことから、今回の改正で、清算所得課税を廃止(旧法法6、92〜120の削除)するとともに、清算中の内国法人である普通法人又は協同組合等に各事業年度の所得に対する法人税を課する制度に改められた(法法5)。 例えば、法人がその代表取締役からの債務について、債務免除益を受けた場合や多額の資産の譲渡益が生じた場合等には、これらは益金の額に算入される。 このような多額の債務免除益がある場合等には課税が生じることが予想され、旧法の清算所得課税における場合と整合性のとれた制度となるよう、「残余財産がないと見込まれるとき」には期限切れ欠損金額に相当する金額は、青色欠損金額等の控除後の所得金額を限度として、所得の金額の計算上、損金の額に算入することとされた(法法59B)。 別紙図参照
 二、残余財産がないと見込まれることの意義
 解散した法人が清算中の事業年度終了の時において債務超過の状態にあるとき、例えば、清算中の各事業年度終了の時の実態貸借対照表(当該法人の有する資産及び負債の価額により作成される貸借対照表をいう)等が該当すると考えられるが、期限切れ欠損金を損金算入する場合には、その確定申告に残余財産がないと見込まれることを説明する書類を添付する必要がある(法規26の6三)。          
 また、残余財産がないと見込まれるか否かの判断は、法人の解散の時ではなく、その法人の清算中に終了する各事業年度終了の時の現況による(法基通12−3−7)。 一般的には実態貸借対照表によりその法人が債務超過の状態にあるかどうかを確認することができるが、これに限るものではなく、例えば、裁判所若しくは公的機関が関与する手続き、又は一定の準則により独立した第三者が関与する手続きにおいて、法人が債務超過の状態にあること等をこれらの機関が確認している場合には、残余財産がないと見込まれるときに該当するものと考えられる。 また、この場合の残余財産がないと見込まれることを説明する書類は、必ずしも実態貸借対照表による必要はなく、これらの手続きの中で作成された書類によることもできる。
 活用のポイント
 尚、清算中の法人が実態貸借対照表を作成する場合の資産の価額は、当該事業年度終了の時における処分価額によるが、法人の解散が事業譲渡等を前提としたもので、その法人の資産が継続して他の法人の事業の用に供される見込みであるときは、当該資産が使用収益されるものとして当該事業年度終了の時において譲渡される場合に通常付される価額によることに留意する(法基通12−3−8〜9)。
 
過年度における仮装経理に基づく法人税額の取扱い
2010/10/31
 民亊再生法による再生債務会社が、民亊再生法の適用認可決定により債務免除を受け、再生の道へスタートしたものの、過年度において粉飾決算をしていたために繰越欠損金がほとんどなく、税務上は免除された債務が債権者から免除を受けた扱いになるため、債務免除益という益金処理がなされる。 よって多額の課税上の問題が発生することが散見される。 このことは、民亊再生計画のうえで事業再生の障害になり実務上大きな問題となります。 このような場合、再生会社は多額の含み損を抱える資産があればそれを処分したり、不良債権等があれば償却することによって特別損失を計上することは勿論、仮装経理に基づいて過大申告をした過年度の税務申告について、法人税額を過大納付した場合の仮装経理の事実を修正し税額更正の手続きを経る必要がある。 その際、最も重要なことは課税庁に対して粉飾、虚偽の内容を記載した仮装経理の事実を証明する取引証憑等の疎明資料を逐一整備しながら、再生計画を進めていくことが重要である。
 活用のポイント
 民亊再生法は和議法に代わる新しい、再建型手続きとして平成11年12月に可決、成立した。 民亊再生や会社更生等に基づく法的整理においては、事業会社の再生再建が第一義であるが、税務上は債務免除等に対しては区別することなく課税するのが原則である。 例えば、民亊再生手続により免除を受ける金額が5億円であるのに対し、繰越欠損金が3億円しかないような場合には、差額の2億円に対して課税が生じてしまう事になる。
 従って、財務体質の脆弱な再生会社等にとっては納税が予想以上の負担になり再生の障害になりかねない事態が生じる。 とりわけ、仮装経理により粉飾決算をしていた法人にとってはなおさら重要な問題となる。  
 法人が仮装経理に基つく過大申告をしたことにより、法人税額を過大に納付した場合には、法定期限から1年以内の場合には、税務署長に対して更正の請求をすることができます(国通法23@)。 1年を超える場合には、税務署長の職権更正によることにますが、減額できる期間は法定申告期限から5年以内と制限されています(国通法70A)。 このため仮装経理や更正の時期によっては、会計上の欠損金の全額が税務上の欠損金として容認されない場合があり得ます。      
 法人税法70条の規定は(仮装経理に基つく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除)、このように事実を仮装して経理し、所得を過大に申告した場合は、法人がその後の事業年度においてその事実に係わる仮装経理の修正をし、かつ当該修正経理をした申告書を提出した場合には、税務署長の更正によりその部分に該当する法人税額をその更正の日の属する事業年度開始の日から5年以内に開始する各事業年度の所得に対する法人税額から順次控除することができる、いわば救済措置である。 この場合、更正の日の属する事業年度開始の日1年以内に開始する各事業年度の所得に対する法人税の額でその更正の日の前日において確定しているものがあるときは、税額控除の対象金額のうちその前1年の確定法人税額に達するまでの金額を還付することとされている(法法134条2)。
 また、5年経過後においてなお控除しきれない金額については、5年目の時点で還付されることになっている(法法70@)。                       
 なお当然のことであるが、税務署長が積極的に減額更正することは稀で、基本的には納税者からの更正の請求を受けて(法法129A)、事実が確認された段階で減額更正するのが現状である。 その際、仮装経理した事実を課税庁に疎明するのは容易ではない。   
 特に、土木・建設業等は公共工事の入札が企業経営の生命線である為、本来あってはならないことであるが、経営審査事項評点アップ対策として仮装経理が実務上散見されるところである。 仮装経理とは、事実に基づかず恣意的に課税所得を過大に計上することであるが(例えば、売上過大計上、仕入れ除外、棚卸資産の架空計上、資産売却損の未計上等)実務上は、経理担当者ですらどこをどう仮装したか把握していない事例も多いと聞く。 従って、減額更正を受けるためには、仮装経理の結果をもとに修正経理することにより、その修正した事実を明示することが重要である。 具体的には、修正の経理をするとは損益計算書に前期損益修正損等として会計処理するとともに、この場合修正事業年度の損金にはならないので、同額を別表四で加減算の税務調整を行う必要がある。
 前述のとおり、法定申告期限より1年過ぎての更正は、更正の請求ではなく、税務署長の職権に属するものなので、申告書の提出に際しては減額更正の請求の嘆願書等を添付する必要がある。 なお、嘆願書の提出は税法の明文規定による手続きでないため、必ず減額更正がなされるとは限らないことに留意しなければならない。 そのためにも、再生債務会社は確定決算により修正の経理をした事実に基づいて当該申告書を作成するとともに、その際仮装経理の事実を修正したことを取締役会はもとより株主等にも明示したうえで、更正の手続きを経る事が重要である。
 なお東京高裁平成15年2月27日に判決において、願書の提出をしなかった顧問税理士に善管注意義務違反による債務不履行責任が問われた判示があるように、職業会計人は専門家としての高度の注意義務を課せられる可能性があるので、職権更正の可能性がある程度高いと判断される場合には、嘆願をすることを指導しておくとともに、その際仮装経理をした疎明資料を逐一精査しながら、課税庁に対して取引証憑等の状況証拠を整備しておくことが肝要である。
 
完全支配関係がある法人間の寄附金及び受贈益
2010/7/1
 平成22年度税制改正では、完全支配関係がある内国法人間の寄附金の授受について支出法人において全額損金不算入とするとともに、受領法人においては全額益金不算入とすることとされた。 これに対して、個人による完全支配関係が成立している法人間の寄附金、又は完全支配関係が成立していない内国法人間の寄附金については、従来どおり支出法人において一定の損金算入限度額を超える金額を損金不算入とするとともに、受領法人においては全額益金算入とすることになる。 
 一、グル−プ法人税制創設の目的
 グル−プ法人税制とは、経済のグローバル化の進展や企業経営の多様化に対応するため、平成11年商法改正(株式交換・株式移転制度の創設)12年商法改正(会社分割制度の創設)等ここ数年、会社分割を利用した分社化や株式交換による完全子会社などで、100%親子会社関係が創設されるケ−スが増加傾向にある。 このようなことから、グル−プ法人の一体的運営が進展している状況を踏まえ、実態に即した課税を実現する観点から100パ−セント完全支配関係にある法人間同士を一体とみて、課税を行うという(グル−プ内の内国法人を一つの法人であるかのように捉えて課税する仕組みが必要)考え方に基づく税制である。 
 改正前の連結納税制度においては、連結法人間の寄附金は損金不算入とされ、受領法人においては受贈益として益金算入とされていたが(二重課税ではないかとの批判)、本改正では内国法人が完全支配関係がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額は、寄附金を支出した法人については全額損金不算入(法法37A)、これを受領した法人においては受贈益の額を全額益金不算入(法法25の2@)と改正された。 但し、この規定が適用されるのは、「法人による完全支配関係」がある場合に限られる。 
 完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係として一定で定める関係(以下「当事者間の完全支配の関係」という。)又は一の者との間に当事者間の完全支配関係がある法人相互の関係をいう(法法2+ニの七の六)。 尚、「一定で定める関係」とは、一の者(その者が個人である場合には、その者及びこれと特殊の関係のある個人(法令4@)が法人の発行済株式等(自己株式を除く)の全部を保有する場合におけるその一の者とその法人との間の関係(「以下完全支配関係」という。)をいう。 
 完全支配関係内の内国法人間の寄附金についての損金不算入・益金不算入の取扱いは、支出法人においては別表4で加算(社外流出)、受領法人においては別表四で減算(社外流出)の申告調整を行うことになる。 その際、完全支配関係にある法人について、直接保有割合が必ずしも100%とは限らないため、利益積立金額の加減算調整において、持分割合(親法人が保有する子法人株式数/子法人の発行済株式数)を考慮して計算することになる。 従って、法人が有する当該法人との間に完全支配関係がある他の子法人の株式について寄附修正事由が生じる場合には、親法人において寄附修正事由として利益積立金の調整及び子法人株式の帳簿価額修正が必要になる(法令9の1項7号)。 
 すなわち、次の金額を利益積立金に加算し、その寄附修正事由が生じた時の直前の帳簿価額にその金額を加算して計算することになる(法令119の3E)。
 「受贈益の額×持分割合−寄附金の額×持分割合」
 ニ、法人による完全支配関係・個人による完全支配関係
 完全支配関係が成立しているグル−プのうち、法人による完全支配関係が成立しているグル−プと個人(その同族関係者を含む)による完全支配関係が成立しているグル−プとに大別される。 
 100%グル−プ内の内国法人の寄附金については、「法人による完全支配関係に限る」という括弧書きが付されているため(法法25の2@、37A)同一の者が個人の場合は対象外であり、その適用はない。 従って、個人による完全支配関係が成立している場合に、完全支配関係がある内国法人間で寄附金の授受が行われた場合の取扱いは、支出法人においては、損金算入限度額を超える部分は損金不算入、受領法人は全額益金算入となる。 このことは、完全支配関係が成立しているグル−プ内の法人間の寄附金及び受贈益を無条件に課税の対象外とすると、課税なしに会社間で内部留保の移転が可能となり個人が所有している会社の株式の評価額を引き下げることとなり、その結果、相続対策に活用される懸念があるため異なる取扱いになったものと思われる。
 三、活用のポイント
 22年10月以降に100%グル−プ内の法人間で寄附を行った場合には、寄附を行った法人間を一つの括りとして、それぞれの法人が誰によって支配されているのか、また寄附をすることによって個人株主の相続税評価額等に影響が及ぶことはないか等を慎重に確認したうえで、本制度の適用の有無を判断することに留意することが肝要である。
 
原稿用紙B5横フリ−レント契約と賃貸料の税務上の取扱い
2010/2/17
フリ−レント契約を締結し建物を賃貸借している場合、フリ−レント期間中のその賃料の税務処理は、契約の内容等によって異なるため、その実態に基づいて個別に判断していくことに留意する。
 一.フリ−レント契約とは
 フリ−レント契約とは、テナント等の空室を防ぐ目的で一定の期間解約しないことを条件に、数ヶ月間の賃料を無料とする契約等のことをいう。 このところ、首都圏を中心に大型高層ビルの建設ラッシュが続く一方で、テナント等の空室が問題になっている。 日本経済研究センタ−の中期経済予測のマクロ経済デ−タを活用して、オフィス市場動向研究会が今後十年間のオフィス賃料予測を毎年行っているが、2009年の予測結果によると、短期予測では、リ−マンショック以降の日本経済はマイナス成長になるなど景気が低迷し、賃料は十パ−セントを超える下落が続き、空室率も七パ−セントを超えて高くなると推定している。 こうしたことから、最近では不動産賃貸借契約に際しフリ−レント契約等が広く活用されている。 
 賃貸借契約において、フリ−レントの期間の定めがある場合には「賃貸期間の途中解約ができるか否か」等その内容いかんによって処理方法が異なる。 そこで問題となるのが、フリ−レント期間中の賃貸料に対する税務上の取扱いである。
 二.フリ−レント期間中の賃貸料計上の要否
 法人税法上、資産の賃貸借契約に基づいて支払いを受ける家賃等の収益計上時期は、契約又は慣習により支払を受けるべき日の属する事業年度の益金の額に算入するとされている(法基通2−1−29)。 契約形態によって、たとえば、
 @途中解約が可能なフリ−レント契約の場合
 フリ−レント期間を設けるのが契約の条件であり、そのことが契約で明確にされていれば、フリ−レントの期間中は家賃収入がないので収益の計上要せず、実際に家賃を収受し始めてから、すなわちフリ−レント期間終了後より益金算入することになる。 またフリ−レントの期間を設け、家賃を免除するのが、販売促進のためのものであることが明確にされている場合には,(借方)広告宣伝費××(貸方)受取家賃×× 処理することも考えられるが、フリ−レントの期間中は家賃収入が生じないので、このような処理をする 必要はないと考える。 ただし、関係会社や取引先など特定のテナントだけにフリ−レントの期間を設けて、無償で貸し付けるとすれば、通常収受すべき家賃相当額は(借方)寄附金又は交際費××(貸方)受取家賃××の会計処理をすることになる。
 A途中解約不能なフリ−レント契約の場合
 賃貸期間の途中での解約ができないような特約が付されている場合には、賃貸期間中に受け取る家賃の総額があらかじめ確定しており、それはフリ−レントの期間を含めた全賃貸期間の家賃収益であると認められることから、フリ−レントの期間中も賃貸期間中に受け取る家賃総額をもとに、期間按分した均等額の家賃収益を益金に算入すべきものと考える。 例えば、3年間の賃貸借契約(途中解約不可)で3ケ月のフリ−レントの期間が設定された場合、月額賃料×(36ケ月−3ケ月)÷36ケ月=月収益、となる。 これはまた賃貸期間の途中での解約は可能であるが、その際には残存賃貸期間の家賃相当額を損害賠償金等として収受することとしている場合も同様である。
 一方、賃借人側の支払い家賃の取扱いについては、期間中は家賃を支払う必要がなく債務として確定していないので(法基通2−2−12)損金算入はできない。 しかし、途中解約ができないという場合には、支払家賃の債務額は確定しているのでフリ−レント期間中もその均等額を支払い家賃として損金算入することは認められる。
 フリ−レントの賃料に対する消費税法上の取扱いについて、建物の貸付けを行った際の賃料は、居住を目的としたものである場合には非課税となるが、事業者に対してテナント等として貸付けを行っている場合には、その賃料収入は消費税法上の課税売上に該当する。 消費税法上、事業者に対し解約不能を前提としたフリ−レントを行った場合、いつの課税期間の課税売上となるのか確認しておく必要がある。 すなわち、期間中は賃料収入がない(対価を得ていない)ため、不課税売上となり、期間終了後における賃料収入がその課税期間の課税売上となるのが原則である。 なお、途中解約が行われたことにより賃借人から数ヶ月間分の賃料相当額の支払いを受けた場合、その賃料相当額が賃料を補填するものである場合には課税売上となり、逸失利益の補償金(損害賠償金)の性格を有するものである場合(資産の譲渡等の対価に該当しない)には不課税売上となるので留意されたい。
 活用のポイント
 以上のように、フリ−レント契約を締結する場合、当該期間中の賃料の税務処理は契約の内容等によって異なるため、その実態に基づいて個別に判断していくことが肝要である。
 
ソフトウェアに係る工事進行基準
2009/8/11
 これまでの実務において、長期の未完成請負工事等についての請負に係る収益及び費用の認識基準について、法人の選択により工事完成基準と工事進行基準のいずれかを選択適用することとされていた。 その結果、同様の請負工事契約に関して適用される収益の認識基準が企業の選択により異なってしまうという弊害(財務諸表間の比較可能性)があること、また我が国の会計基準を国際会計基準にコンバ−ジェンスしていく必要があることから、平成19年12月27日に「工事契約に関する会計基準」が公表され、今後は一定の要件「成果の確実性」が認められる工事契約及び受注制作のソフトウェアについては、工事進行基準を適用しなければならず、工事完成基準の適用は認められなくなる。
 一、工事契約に関する会計基準の概要
 ソフトウェアの受注制作においては、従来請負契約として工事完成基準(収益及び原価は完了、検収時に計上)を採用していた法人が多数を占めていた。 公表された本会計基準の適用範囲には請負契約のうち土木、建設
、造船や一定の機械装置の製造等、基本的な仕様や作業内容について顧客の指図に基づいて行う「工事契約」と「受注制作のソフトウェア」が含まれており、「成果の確実性」が認められる工事については工事進行基準(決算日に、収益及び原価をプロジェクトの進捗度に応じて計上)を適用することとされている。 従って、今後は工事進行基準を適用するケースが増加するものと予想される。
 工事進行基準を適用するには、工事契約に係る認識の単位ごとに工事契約において当事者間で合意された「実質的な取引単位に基づく」こととされ、その進捗部分について「成果の確実性」が認められる場合には工事進行基準を適用し、この要件を満たさない場合には工事完成基準を適用するとしている(会計基準8,9 )。 この成果の確実性が認められるためには、次の3要素を信頼性をもって見積ることができなければならないとしている。 @工事収益総額 A工事原価総額 B決算日における工事進捗度 
 二、工事進行基準における税務上の取扱い
 平成20年度税制改正において会計基準による会計処理との整合性を図るために、法人税法の改正が行われた。 
 改正のポイントは、次のとおりである。
 法人が長期大規模工事(製造及びソフトウェアの開発を含む。)の請負をしたときは、所得の金額の計算上、収益の額及び費用の額のうち、政令で定める工事進行基準の方法により計算した金額を、益金及び損金の額に算入する(法法64@)。 このため、会計上成果の確実性の判断のもと、工事進行基準又は工事完成基準のいずれを採用したかに係わらず、一定規模のプロジェクトについては、工事進行基準を適用することが必要となる(強制工事進行基準)。 一方、長期大規模工事以外の工事について、法人が政令で定める工事進行基準で会計処理した場合には、その経理した収益及び費用の額を所得の計算上、益金及び損金の額に算入することができる(法法64A)とされており(選択工事進行基準)、税務上も同様の処理を行うことが可能となっている。 原則として、平成21年4月1日以後開始する事業年度において着手する工事(受注制作)から適用されるが、経過措置として同日前に開始した事業年度に着手した工事についても先行適用ができることとされている。
 @ 工事進行基準の対象に、ソフトウェアの受注制作を加える(法法64@、法令129@)。
 A 工事進行基準によるべき長期大規模工事の範囲について、工事期間要件を2年以上から1年以上に、請負金額要件を50億円以上から10億円以上にそれぞれ改正。
 B 請負の対価の額の2分の1以上がその工事の目的物の引渡しの期日から1年を経過する日後に支払われるものでないこと。
 C 工事進行基準を適用できる長期大規模工事以外の工事の範囲に、損失が生じると見込まれる工事(工事損失引当金)を追加。
 D 工事進行基準の適用により計上した未収入金は、金銭債権として貸倒引当金を設定できる。
 活用のポイント
 法人税法では、企業の恣意性の介入を排除するため、原則として費用の見越計上を認めていないので、ソフトウェアの工事契約(受注制作)から損失が見込まれる場合に、工事損失引当金として会計処理した金額については当該事業年度において損金の額に算入されないことに留意する(法基通2−4−19)。 また、工事進行基準を適用している工事に係る未収入金について、従来は目的物の引渡し前の未収入金は貸倒引当金の対象から除かれていたが、このたびの改正で、金銭債権として貸倒引当金の設定対象となることが認められたことにより、20年4月1日以後に開始する事業年度から貸倒引当金の対象となることに留意することも肝要である。
 
役員給与の期首からの増額改定の可否
2009/2/21
役員の定期給与の改定は定時株主総会で決定されるのが一般的であるが、中小会社の場合は、旧商法の下において、臨時株主総会等で役員報酬の改定を決議していた例も少なくない。 新会社法の下でも、税務上はこれを禁止する規定はないので、臨時株主総会等での決議をもって直ちに損金算入の是非を問うことにはならない。 従って、期首からの増額改定することについては、客観的な合理性があるか否かがポイントになり、課税庁側にその合理的な理由が説明できるようにしておくことが肝要である。
 一、現行の役員給与等の法人税の取扱い
 法人がその役員に対して支給する給与について、損金の額に算入される範囲の見直しが行われた。 即ち、平成18年改正前において役員報酬と役員賞与の区分は、役員に対して支給する給与が定期のものか臨時のものかという支給形態の区分によって、報酬か賞与かを区分して損金算入の可否を決めていたが、改正後の規定は、役員給与がその「職務執行前にあらかじめ支給時期、支給額が定められていた」ものに基づくものであるか否かによって、損金算入の可否を決めることとされた。 また、この職務執行前にあらかじめ支給時期、支給額が定められている形態として、法人税法第34条第1項では、イ.定期同額給与(その支給形態から事前の定めに基づいて支給されているものと認められる給与)ロ.事前確定届出給与(税務署長への届出により事前に定められていることが確認できる給与)ハ.利益連動給与(有価証券報告書等への開示により支給額の算定方法が事前に確認できる給与)、以上の三形態によるものが役員給与として損金算入が認められ、これ以外のものについては損金算入が認められないことを明らかにしている。 なお、上記イからハの給与であっても、不相当に高額な部分又は隠ぺい若しくは仮装経理によるものは損金の額に算入されないことになる。 このように、役員給与は会社法第361条において職務執行の対価として明確に位置づけられ、通常は事業年度開始後3か月以内に開催される定時株主総会で総額を決定し、具体的な支給額については取締役会でその配分を決定することが企業慣行として定着している。
 二、定期給与の増額改定に伴う一括支給額
 平成18年改正前の法人税では、既往に遡及して役員報酬の支給限度額を増額改定することについて、定時株主総会において増額改定する旨の決議がされた場合にその改訂決議を期首に遡って適用して一括支給することが通達(旧法基通9−2−9の2)で認められていたが、改正後は、この通達の廃止によってこれが認められなくなったことから、今後も従来と同様に期首からの増額改定をしたいという場合には、実務対応として形式的に二つの方法が考えられる。 一つ目は、期首からの三か月以内の増額改定は、必ずしも定時株主総会に限定されていないとして、増額しようとする事業年度の前期末近くに臨時株主総会を開催し、増額決議を行う方法である。 二つ目は、遡及増額分を月額の役員報酬に均等に配分加算して定期同額で支給する方法である(図参照)。 また、役員給与の総額の限度内の改定であれば取締役会のみで改定することができるものと思われる。
 三、活用のポイント
 法人税の改正後は、定期の給与の額につき、その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から三か月(保険会社の場合は四か月)を経過する日までに増額改定された場合における、改訂前の同額定期給与、改訂以後の同額定期給与も「定期同額給与」に該当することになる(法令69@―イ)。 このことから、増額しようとする事業年度の前期末近くに臨時株主総会を開催し役員給与を増額することについても、定期同額給与として取り扱うと考えられ、損金算入の疑義が生じる余地はないようである。 例えば、3月決算法人の場合、増額しようとする事業年度の前期3月末日近くに臨時株主総会を開催し、新事業年度からの定期給与の額の増額を決議し、事業年度開始の月から増額改定後の金額で毎月支給すれば、新事業年度の4月から翌年の3月まで同額となり、「その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの」に該当することになり、原則として損金算入が認められる。 しかも、事業年度の中途での改訂ではないので、利益操作とみられることもない。 また、既に終了した職務に対して「事後」に給与の額を増額したものではないので、法人税法第34条第1項に規定する「定期同額給与」に該当することとなる。 但し、役員に対する定期給与の額を新事業年度開始の月から増額改定することについて、その増額改定することの合理的、客観的根拠理由が税務調査の現場で問われることが予想されるので、課税庁側にその合理的な理由を説明できるよう証憑書類(例えば議事録をはじめ売上高や利益がどれだけ増加するかといった増額改定することの客観的な根拠等)を整備することが肝要である。 また増額改定だけでなく、減額改定もこれに準ずることに留意されたい。
 
役員退職給与の現物支給に係る課税上の取扱い
2008/10/11
平成18年5月1日の会社法の制定に伴い、役員退職給与も職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益に該当するものとして規定されたことから(会社法361@三)、平成18年度税制改正により、平成18年4月1日以後開始事業年度から損金経理要件が廃止された。 このことから、現物の簿価での支給及び引当金並びに退職積立金等での支給も不相当に高額でない限り損金算入が認められる。 その際、税務上の支給額は、帳簿価額の支給額ではなく現物を時価評価して不相当に高額かどうかを判定することになるので留意されたい。
 なお、法人が役員退職給与を現物支給する場合は、金銭で支給する場合と同様に、その具体的内容を株主総会の決議等により定めることとなっている(法基通9−2−28)。
 T、平成18年度改正前と改正後の役員退職給与の規定
 法人税法の役員退職給与の規定について、
改正前は、法人の各事業年度において、役員に対して支給する退職給与の額を法人の損金の額に算入するためには、@当該役員が現実に退職していること、A株主総会の決議等により支給すべき退職給与の額が具体的に確定していること、B支給する金額を確定した決算において損金経理すること等、すなわち法人税法36条で損金経理を要件としていた。  平成18年5月1日に施行された会社法では、役員退職給与も、取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益に該当するものとして規定されたことから損金経理要件が廃止された。 したがって、支給時に仮払経理し、その後株主総会で承認を得た事業年度において損金経理しなかったとしても、別表上申告減算することが可能である。 しかし、退職した役員に対して支給した退職給与の額が、相当であると認められる金額を超える場合の過大な役員退職給与の額については損金算入が認められないのは、従前と同様である(法令70@二)。 
 改正前の税制では、特に現物支給による役員への退職金支給について、簿価で支給した場合において時価より簿価が低額であったことによる譲渡益の不足額が認定課税され、一方役員退職給与の損金経理が不足している部分についても損金算入が否認され課税上の問題が生じていた。 改正後は時価と簿価との差額についての課税上の問題点が、損金経理要件が廃止されたことにより、税務上の取扱いは不相当に高額でない限り是認されることになる。
 2、事例検討
 例えば、法人が所有する含み益が生じている土地等(簿価3000万、時価5000万、役員退職金の適正額4000万)の資産を役員退職金として現物支給した場合、法人税法第22条第2項の規定により、時価によって譲渡されたものとしての取扱いは改正前の規定と同様である。 会計上の仕訳を示すと(借方)役員退職金3000万、(貸方)土地等3000万、税務上の仕訳を示すと(借方)役員退職金5000万、(貸方)土地等3000万、譲渡利益2000万となり、税務上は4000万が役員退職給与の適正額であるので、時価との差額1000万が不相当に高額な役員退職給与となり損金不算入として、別表上申告加算され、課税所得の増額になる。 また、法人において3000万の役員退職給与の源泉所得税額を徴収している場合には、5000万の支給として再計算をして徴収しなければならない(損金不算入額1000万について、退職所得又は給与所得かの区分いかんによっては所得金額が異なるので徴収税額に多額な差異が生じることになる)。
 また、本事例の役員退職給与の適正額が5000万の場合の取扱いについては、会計上の仕訳、税務上の仕訳も前記同様であるが、改正前の税務においては、損金経理要件の規定があったため、この場合2000万の譲渡利益が課税所得に増額されていたが、改正後においては、損金経理をしていなくても時価が役員退職給与の適正額の範囲内で、かつ株主総会等の決議を得ている場合には課税所得には影響はなく、源泉所得税の徴収不足(住民税も同様)のみが生じることになる。
 活用のポイント
 平成18年度の法人税法の役員退職給与についての改正で、損金経理要件が廃止されたことにより、含み益のある土地等の資産を簿価で役員退職給与として現物支給した場合、定款、役員退職金規定等に基づいて適正額を算定し、その際当該資産を時価評価して不相当に高額かどうかを判定することが肝要である。 なお、引当金や退職積立金から支出した役員退職金の支給等についても、不相当に高額でない限り税務上是認されることにも留意されたい。
 
販売用土地に係る未確定の不動産取得税の見積計上可否の取扱い
2007/9/21
 賦課課税方式による租税の不動産取得税は、地方自治体が、賦課決定によって税額を確定するとともに、納税の告知と呼ばれる行為によって納税義務者にその納付を請求するのであるが、税額が確定した時に損金計上するのが原則である。 が、期中に販売用土地を取得し、期中に売却したような場合の未確定の不動産取得税の取り扱については、販売用土地に係る棚卸資産の原価として見積計上しても、損金算入が認められるものと考えられる。   
 一、不動産取取得税と法人税法第22条
 最近における不動産取引の活況に伴って、(都心を中心にミニバブルなどといわれて久しい)不動産取得税の取り扱いについての問題が多く発生している。 この不動産取得税は、不動産の取得を対象として課される都道府県税である。 固定資産税が不動産を含む固定資産の所有の事実に着目して課される財産税であるのに対し、不動産取得税は、不動産の取得の事実に着目して課される流通税である。 不動産取得税の課税標準は、不動産を取得したときにおける不動産の価格であるが、原則として固定資産課税台帳に価格が登録されている不動産については、その価格により課税標準を決定することとされている。
 さらに課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は特別の事情があるため固定資産課税台帳価格によりがたい不動産については、都道府県知事が固定資産評価基準によって課税標準を決定することとされている。 税率は、不動産価格の4パ−セントの標準税率である。
 法人税法第22条第3項では、「各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入すべき金額を、別段の定めあるものを除いて、第1号では、当該事業年度の収益にかかる売上原価、完成工事原価、その他これらに準ずる原価の額 第2号では、1号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用の額については、償却費を除いて期末までに債務が確定していない限り、その事業年度の損金の額に算入されない(これを債務確定基準とよんでいる)。 第3号では、当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引にかかるものの額」と規定している。 取得した販売用土地に係る不動産取得税を、その土地の取得価額に算入すべきかどうかは問題の存するところであるが、税務上はこれをその取得価額に含めても、また含めなくても差し支えないものとしている。 従って、期中に取得し、期中に売却したような場合の販売用土地に係る不動産取得税はかかる事業年度の所得の計算上、収益に係る損金の額に算入される売上原価等となるべき費用の第1号に該当するものと考えられる。
 ニ、租税の損金算入の時期
 法人が納付すべき国税及び地方税については、申告納税方式による租税、賦課課税方式による租税、特別徴収方式による租税等があるが、賦課課税方式による租税は、賦課決定のあった日の属する事業年度の損金の額に算入する。 ただし、法人がその納付すべき税額について、その納期の開始の日(納期が分割して定められているものについては、それぞれの納期の開始の日とする。)の属する事業年度又は実際に納付した日の属する事業年度において損金経理をした場合には、当該事業年度とすると定めている(法基通9−5−1(2))。 即ち、損金算入される租税については、いわゆる債務確定基準に基づき申告又は賦課決定等があったことにより、具体的に債務が確定した段階で損金算入することを定めているが、例えば、期中に販売用土地を取得し、期中に売却し収益を計上したような場合、当該期間中に不動産取得税の賦課決定の告知がなされなかったような場合には、未確定の不動産取得税の見積計上が可能かどうかであるが、それについては費用収益対応の原則からもその見積り計上を認めるべきであると考える。 このことについて、法基通2−2−1おいて、『売上原価等が確定していない場合の見積りとして、(損金の額に算入される売上原価等)に規定する「当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価」となるべき費用の額の全部又は一部が当該事業年度終了の日までに確定していない場合には、同日の現況によりその金額を適正に見積もるものとする。 この場合において、その確定していない費用が売上原価等となるべき費用かどうかは、当該売上原価等に係る資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供に関する契約の内容、当該費用の性質等を勘案して合理的に判断するのであるが、たとえその販売、譲渡または提供に関連して発生する費用であっても、たんなる事後的費用の性格を有するものはこれに含まれないことに留意する。』と定めている。 この場合の売上原価等の見積り計上と、いわゆる債務確定基準との関係については、その費用が売上原価等となるべき費用かどうかの判断にその基準を求めることとしている。
 活用のポイント
 期中に収益計上した販売用土地に対応する売上原価等が期末現在において未確定である場合のその見積り計上について、その未確定の費用が売上原価等となるべき費用かどうか、税務上容認されるためには、具体的にその金額を見積り得ることと、また継続的にその方法を適用することが、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準の見地からも重要である(法法22条第4項)。 即ち、損益計算書に当該売上に対応する原価として損金の額に算入され、貸借対照表においても債務(未払金)として経理処理することが肝要である。 また、単なる見込みや引当ではなく、事実を具体的に認識し、これを具体的な金額として適正に測定しなければならないことに留意されることが必要である。
 
ISO規格取得費用とCI費用の課税上の取扱い
2007/4/1
ISO規格とは、ISO(国際標準化機構)が品質管理及び品質保証等について策定する国際規格(標準化規格)の総称です。
 その取得には申請料、基本料、審査料、登録料等がかかります。 この取得、維持にかかる費用の課税上の取り扱いですが、支出した日の属する事業年度の損金に算入しても差し支えないようです。 また、CI費用については、コンサルティング報酬やシンボルマ−ク(ロゴ)の作成に関する費用等その個々の支出ごとに判断することになります。
 T、ISO規格取得費用の取り扱い
 (1)、ISO規格の制度
 ISOは国際的に通用する製品、用語、マネジメント手法等の標準化を推進し、関連する活動の発展、促進を図ることを目的とする国際機関で、スイスのジュネ−ブに本拠があります。 現在、各企業内等で使われているものは一般に社内規格、業界内等では団体規格、国家内では国家規格、さらにアジア地域や欧州地域等の広範囲になると地域規格、地域を越え世界の産業全体で使用される規格が国際規格となります。 現在国際規格としては、ISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)等があります。 ISO規格の主なものとして、以下三ツのものがあります。
 @ISO9001は、品質管理及び品質保証のための国際標準モデルとして日本ではJIS(日本工業規格)として制定されて以来、企業の営業戦略上の優位性や社内体制の構築による経営改善等、社会的信用の維持とともに競争力の向上が図られるとして、製造業や建設業のほかにサ−ビス業、卸売業、小売業等、業界を問わず普及しています。
 AISO14001は、製品、サ−ビス等について、環境に与える負荷を継続的に低減、防止していくための仕組みを企業の中に構築する環境マネジメントシステム規格として制定されました。 環境問題に対して真摯な態度で取り組んでいるという企業イメ−ジを向上でき、他社との差別化が図られることや、自治体や大手メーカによっては認証取得が入札時の参加条件や評価対象になることもあり、普及しています。
 BISO13485は、人命や健康維持に大きく影響するという理由から品質管理マネジメントシステム規格であるISO9001を基礎に医療機器の分野で役立つように、医療機器の製造メ−カに対してこの規格に従って品質の管理等を求めています。
 (2)、課税上の取り扱い
 @無形固定資産に該当するか
 法人税法上、減価償却資産の範囲のうち無形固定資産として鉱業権、実用新案権、営業権及びその他の資産が掲げられています(法法2ニ十三、同令13八、減価償却資産の耐用年数等に関する省令1三、同別表三)。 営業権といえるかについて、ISO規格は排他的な利用権を有する法的権利を取得するものではないこと、また営業権のように譲渡することができるものではなく、それを取得することによって超過収益力が必ず生ずるものとは認められないことから、営業権には該当せず、税法上の無形固定資産には該当しないものと考えられます。
 A繰延資産に該当するか
 法人税法上、繰延資産とは、「法人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く)のうち、支出の効果が支出の日以後一年以上に及ぶものとされています(法法2二十四、同令一四)。 開発費といえるかについて、開発費が、「新たな技術もしくは新たな経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓又は新たな事業の開始のために特別に支出する費用(同令一四@五)とされていることから、当該取得に係る支出は、市場開拓等のために特別に支出する費用とは云い難いことから開発費には該当しないものと考えられます。 企業がISO規格を取得した場合、これを自社製品に付けることはできず、パンフレットや名刺等に記載し取得したことをPRすることができるに過ぎないこと。 また、一定の事由が生じた場合には、定期審査を拒否する等登録の取り消しの措置がとられるので、支出の効果が一年以上に及ぶものとは云い難いことから、税法上の繰延資産には該当しないものと考えられます。
 U、CI費用の取り扱い
 CI(コーポレイト、アイデンティティ)とは、企業のシンボル及びカラ−等の統一、消費者に与える一貫した企業イメ−ジを意味し、シンボルマ−ク(ロゴ)及び商標等が記憶されやすいように独自性と一貫性をもたせることをいいます。 CI費用については、コンサルティング報酬やシンボルマ−ク(ロゴ)の作成費用等その個々の支出ごとに判断することになります。 コンサルティング費用は、具体的な資産を取得するものではありませんが、その支出の効果が持続することも明らかであるため、繰延資産である開発費として取り扱うことになります。 なお、開発費については、その金額を一時に償却できる任意償却が認められています。 一方、シンボルマ−ク(ロゴ)は、商標権として登録することができ、登録した場合には、無形固定資産として10年で償却することになります。 登録しなかった場合には、コンサルティング費用と同様の理由により開発費として償却することになります。
 V、活用のポイント
 ISO規格取得費用は、無形固定資産や繰延資産として計上するのではなく、一時の費用として取り扱い、支出した日の属する事業年度の損金の額に算入する処理が妥当と思われます。 また、取得後も毎年、規格に適合しているかどうかの定期審査に係る審査料、年間維持登録料等も損金に算入することが認められます。 但し、審査基準を満たすために新規に設備投資等を行った場合には、通常の減価償却資産として資産計上する必要があります。 また、CI費用については、当該作成に関する費用等その個々の支出ごとに判断することに留意する。 
 
中小会社のDESの活用と税務の取扱い
2006/09/06
 中小会社にとって、一般の債権者である銀行等がDESに協力してもらえる可能性は上場会社の株式と異なり、換金性が乏しいので非常に少ないのが一般的である。このため、オーナー経営者としての社長が自らの債権を資本に振替える手法が考えられる。その際、法人にとっては増資に伴い資本金が大きくなるので、税法上中小企業に対する課税上の優遇措置が適用不可となる可能性もでてくる。また、同族会社の個人株主にとっては増資による含み益の移動に伴いプレミアムの問題が生じ、株主間でみなし贈与税の課税関係が発生することもあるので留意されたい。
T、DESの仕組み
 最近、大手スーパーや準大手ゼネコン等の過剰債務に悩む企業の経営再建策の一つの手法として借入金の一部を出資に振替えてもらう債務の株式化(デット・エクィティ・スワップ)が行われている。DESとは、デット(債務・借入金)とエクィティ(資本・株式)をスワップ(交換)することをいい、債権者が債務者の経営再建支援のために債権の一部又は全部を株式に転換する債務の株式化である。その際法人は借入金が減少し、その分資本金に組み入れられることになるので借入金の資本組入れともいう。これによって債権の出資を受けた法人の当該出資者に対する債務は混同により消滅し、出資を受けた資産に相当する資本等の金額が増加する。
U、中小会社の活用法、 
 中小会社にとって、債権者である金融機関がDESに協力してもらえる可能性は換金性がない等の理由から非常に少ない。然るに、中小会社では活用法がないかというとそうではなく、唯一行われているのはオーナー経営者としての代表者が自らの債権を資本に振替える、社長の借入金の現物出資による債務の株式化である。これと同時に無償減資を組合せて行う手法が一般的に検討されている。
 これらの手法を活用することによって債務超過を解消できるとともに、資本の部に計上されている多額の欠損金を無償減資によるその他の資本剰余金と相殺し、過去の欠損金の清算を行うことができる。その結果、自己資本比率が高まり、財務体質の改善がなされ企業経営の健全化が図られる。
V、DESの税務 
 税務上の処理については、これまでに明確な取扱規定はなかったが、平成15年2月28日付、債務の株式化により取得した株式の取得価額については、時価とする通達の改正がおこなわれた(法基通2−3−14(債権の現物出資により取得した株式の取得価額)。金融機関等が貸付先法人との間で行うDESは第三者間の取引なので、あまり問題は起きないと思われるが子会社等、関連会社間で行うDESは再建計画に合理性が認められない場合は、貸倒(譲渡)損失が債務者に対する寄附金と認定される可能性があるので、留意する必要がある。本稿では、主として中小会社における社長の借入金の現物出資による税務上の取扱いを考察したい。
1、法人側の税務
 社長の借入金の現物出資は、法人にとっては借入金が減少しその分が資本金に組み入れられるので、資本取引に該当することになり、法人には課税関係は発生しない。ただし、資本金が増加することにより、税法による中小企業に対する優遇措置の適用が制限されることがある。主なものは、以下のとおりである。
 @交際費等の損金不算入
 A寄附金の損金不算入 
 B中小法人の軽減税率の特例 
 C中小企業者の機械等の特別償却 
 D法人住民税の均等割 
 E外形標準課税等 
 また消費税法上、現物出資法人が被現物出資法人より交付を受けた債権の現物出資による株式の取得は、非課税売上高となるので課税売上割合の計算にも影響する。
2、株主側の税務
 現物出資により発行する新株は、金銭の払込による株式の発行と同様に、その発行価額が決められる。その際、現物出資による債務の株式化に伴う株主側の課税関係は、時価で払込金額を決定せずに、特に有利な価額発行をした場合には、同族会社における個人株主の親族間にプレミアムの移転があったものとみなして、以下のように贈与税の課税関係が発生するので、留意する必要がある。
@払込金額が増資後の株式評価額より高い場合は、増資に係わる新株の引受人から増資前の旧株主に対してプレミアムの移転があったものとして、みなし贈与課税が生じる。
A払込金額が増資後の株式評価額より低い場合は、増資前の旧株主から新株式の引受人に対してプレミアムの移転があったものとして、みなし贈与課税が生じる。
W、活用のポイント
 従って、株式の評価額に際しては払込金額を時価で決定しないと、同族会社における個人株主の親族間でプレミアムの移転による贈与税の課税関係が発生するので注意が肝要である。
 
役員給与の改正と課税上の取扱い
2006/8/1
 18年度税制改正で、4月1日以後開始する事業年度から役員給与については、定期同額、事前届出等の要件に該当するものだけが損金算入を認められることとなった。 従って、増額改定額を損金算入するためには増額決定時以降の役員給与を定期同額要件等合致させ、同給与に係る職務の執行を開始する日又は会計期間開始の日から3月を経過する日のいずれか早い日までに財務省令で定める事項を記載した書類をもって届出なければならないことに留意されたい。
 T、改正に伴う役員給与等の諸問題
 平成18年度役員給与等について、二つの点について改正が行われている。 1、役員給与の損金不算入(法法34)2、特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入(法法35)である。 役員給与が1に該当し損金算入額として認容されても、2に該当すれば役員給与に係る給与所得控除額に相当する金額が法人税法上の損金の額に算入されないことになる。 従って、1の規定で損金の額に算入されることを検討し、更に2の規定で損金不算入にならないためには、どのように対応したらよいのかを精査する必要がある。
 U、役員給与損金不算入制度の内容
 内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与等を除く)について、損金算入されるものの範囲は、改正法人税法第34条第1項第1号(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める給与は、次に掲げる給与とされました(法令69@)。
 一 定期同額給与
 @ 同一事業年度内定期同額給与
 支給時期が1月以下の期間ごとであり、かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与その他これに準ずるもの(法法34@一)。
 A 3月以内改定の場合の改定前定期同額給与、改定後定期同額給与(法令69@一)
 B 経営の状況が著しく悪化の場合の改定前後定期同額給与(法令69@二)
 C 供与される利益の額が概ね同額の経済的利益(法令69@三)

 
 二 事前確定届出給与
 役員に対する給与のうち、定期同額給与に該当しないものであっても、その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で政令の定めるところにより納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしている場合における当該給与は事前確定届出給与として損金の額に算入する(法法34@二)。 法人が事前に定めた支給内容を届出た場合には、従来、賞与として支給していた給与も損金算入を認めるということである。 即ち、この規定は役員賞与を損金算入として認めようというものであり、実務上多いに活用すべきものである。 同号に規定する届出は、職務の執行を開始する日と当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から三月を経過する日(保険会社にあっては、当該会計期間開始の日から四月を経過する日)とのいずれか早い日までに(届出期限という。)財務省令で定める事項を記載した書類をもってしなければならない(法規22の3)。
 三 利益連動給与
 同族会社に該当しない法人が業務を執行する役員に対して支給する利益に関する指標を基礎として算定される給与で、報酬委員会での決定等の適正な手続を経ており、かつ、有価証券報告書等によりその内容が開示されていることその他一定の要件を満たすものに限ると規定している(法法34@三)。 従って、非同族会社の中小企業においても、理論的には適用することが可能であるが、実務上適用される法人は上場企業に限られ中小企業は対象外となるものと思われる。 尚、上記に該当する給与であっても、不相当に高額な部分の金額及び事実を隠蔽し又は仮装して経理することにより支給するものについては、損金の額に算入されません。
 活用のポイント
 改正後の法人税法第34条を解釈すると、定時株主総会以外の給与の増額は損金不算入となっていることから、期中の増額は原則として認められない。 減額については政令に定める理由の場合にのみ損金算入が認められる。 従って、あらかじめ支給時期、支給額に基づかない支給については全額損金不算入となるので、職務執行前にあらかじめ支給時期、支給額を支給する旨を定め、届出期限までにその内容に関する届出を納税地の所轄税務署長に提出することが肝要である。 尚、事前届出額を増額又は減額して支給した場合は、事前届出給与といえないことから、全額損金不算入となるので留意されたい。
 
プライバシーマーク取得費用の課税上の扱い
2006/4/11
 プライバシ−マ−クは、個人情報の取り扱いを適切に行っている事業者に対してその使用が認められているもので、登録に際して申請手数料、現地調査料、認定事業者となってマ−クを使用する際にもマ−クの使用料、更新手数料等がかかる。 その際、取得、維持にかかる費用の課税上の取り扱いであるが、I S O規格の認証登録費用と同様に「その支出日の属する事業年度」の損金の額に算入しても問題はないようである。
T、プライバシ−マ−ク制度
 プライバシ−マ−ク(Pマ−ク)制度とは
コンピュ−タの普及、発展により、個人情報がデ−タとして管理され、その取り扱いが容易になっている反面、インタ−ネット関連企業や通信販売の事業者等から顧客デ−タが社外流出し、情報の漏洩が社会的問題(売りに出される名簿、買い取られる個人情報、闇の名簿業者暗躍等)になっている。
 そこで、通商産業省の個人情報に関するコンプライアンス・プログラムの要求事項JISQ15001に準拠した自社の個人情報保護コンプライアンス・プログラム(CP)を策定し、そのCPに基づいて、個人情報保護に対する体制を整備し、個人情報の取り扱いを適切に行っている国内の事業者に対して日本で唯一公的機関の(財)日本情報処理開発協会(J I PDEC)が認定し、その認定を示すプライバシ−マ−ク(Pマ−ク)の使用を認める制度である。
 プライバシ−マ−クの申請に当たっては初回に必要な申請手数料、現地調査料、マ−ク使用料等は事業規模に応じて異なるが、Pマーク申請に関する諸費用は概ね小規模事業者30万円、中規模事業者60万円、大規模事業者120万円とされており、有効期限は2年間で、以後2年毎の更新時にも同様に更新手数料が掛かる。 その際、これら支払手数料等の税務上の取り扱いが問題となる。
U、Pマーク取得費用の税務上の取り扱い
 一、無形固定資産に該当するか 
 法人税法上、減価償却資産の範囲のうち無形固定資産として鉱業権、実用新案権及びその他の資産が掲げられています(法法2二十三、同令13八、減価償却資産の耐用年数等に関する省令1三、同別表三)が、工業所有権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権、ソフトウェア−等)といえるかについては、Pマーク取得に係る諸費用は、ISO規格の認証登録と同様に排他的な利用権を有する法的権利を取得するものではないことから、工業所有権には該当しないものと考えられます。 また、営業権といえるかについては、法人税法上営業権の定義規定が設けられていませんが、商法上は営業権とは暖簾すなわち超過収益力と解することができます。 Pマーク取得に係る法的、経済的効果はいろいろ認められますが、それにより直ちに超過収益力が生ずるとは云い難いことから、営業権には該当しないものと考えられます。 従って、税法上の無形固定資産には該当しないものと考えられます。
 二、繰延資産に該当するか
 法人税法上、繰延資産とは「法人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く)のうち、支出の効果が支出の日以後一年以上に及ぶものとされています(法法2二十四、同令一四)」が、開発費といえるかについて、開発費とは、「新たな技術若しくは新たな経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓又は新たな事業の開始のために特別に支出する費用(同令一四@五)」とされていることから、当該取得に係る支出は、個人情報保護法対応の個人情報保護体制を円滑に運用するための支出という側面もあり、市場開拓等のために特別に支出する費用とは云い難いことから、開発費には該当しないものと考えられます。 また、自己が便益を受けるための費用といえるかについては、一定の事由が生じた場合には定期審査を拒否する等登録の取消し等の措置がとられるので、その支出の効果が一年以 上に及ぶとは云い難いことから、自己が便益を受けるための費用(同令一四@九ホ)には該当しないものと考えられます。 従って、税法上の繰延資産にも該当しないものと考えられます。
 V、活用のポイント
 Pマーク制度について、ISO規格の維持、取得に係る取り扱いと同様の取り扱いがなされることから、その取得に係る支出は、無形固定資産の取得等、繰延資産にも該当せず「その支出する日の属する事業年度の損金の額に算入する」のが相当と認められる。 また、登録後に支出する手数料の定期審査料、更新審査料、登録維持料等のいずれについても、その支出日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。
 
愛知万博の入場券購入費と交際費と隣接費用の接点
2005/5/21
 愛知万博の入場券の購入費用等について法人が販売促進等の目的で当該入場券のみを取引先等に交付する場合において、当該入場券の購入費用は交際費等に該当せず、販売促進費等として処理する。 愛知万博の入場券が一般的な催事の入場券よりも割高であるにも拘わらず、金額とは無関係に販売促進費等として処理できるのは「2005年日本国際博覧会の参加者が支出する費用の税務上の取扱いについて」という国税庁の通達で公表された万博支援のための税務上の優遇措置といえよう。 
T、交際費と販売促進費
 租税特別措置第61条4第3項では交際費等について「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入先その他他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう。」と定義している。 この規定からは交際費等の成立要件として、@支出の目的、A支出の相手方、B行為の形態の三つの要件が挙げられる。 これら三つの要件の一つだけでも満たせば交際費等と認定されるのか、又はすべてを満たさなければ交際費等と認定されないのかについて、異論のあるところであるが後者の三つのすべての要件を満たした場合、交際費等と認定されないといえよう。
 現実に判例で示された要件は、「旧二要件説」「新二要件説」「三要件説」に区分することができるが、とりわけ交際費課税めぐる税務上の論争の多いなか、その課税要件について三要件説の立場から法的基準に基づく判示を行っている萬有製薬事件が注目に値する。 当該事件の第一審判決では、交際費等の成立要件として@支出の相手方が事業の関係者等であること、A支出の目的が交際、接待等を意図したものであること、二つの要件を満たした法人の支出は交際費等にあたるとして、支出が取引関係の円滑化に寄与するものであれば、行為の形態がいかなるものであるかは関係なく、交際費等に該当するとしている。 しかし第二審判決では、第一審の二つの要件に加えて行為の形態の要件を満たさなければ交際費等とされないとして第一審の判決を取り消した。 
 このような観点から、交際費等の課税要件を斟酌すると、このたびの万博の入場券購入費用について、「法人が販売促進等の目的で、入場券のみを取引先等に交付する場合の当該入場券の購入費用は交際費等に該当せず、販売促進費等として処理する」ということを認めている(平成15年6月20日付の事前照会に対する国税庁の回答)ことは万博支援のための税務上の優遇措置であって、これは他の催事等であれば交際費等に該当しても、おかしくない事例といえよう。 一方、消費税法では、法人が販売促進等の目的で、当該入場券のみを取引先に交付する場合において、当該入場券の購入費用は贈答等のために使用するので、自ら引換給付を受けないものとして課税仕入に該当しないことになる(消基通11−3−7)。
U、交際費と福利厚生費
 租税特別措置法通達では、社内の行事に際して支出される金額等で、@創立記念日、国民祝日、新社屋落成式等に際し従業員におおむね一律に社内において供与される通常の飲食に要する費用、A従業員(従業員であった者を含む。)又はその親族等の慶弔、禍福に際し一定の基準に従って支給される金品に要する費用は交際費等に含まれないものとすると区分している(措通61の4(1)−10)。 通常、従業員等への慰安旅行が社会通念上一般に行われている範囲のものであれば福利厚生費とされるが、それを超える給付であれば接待や供応等ということで交際費等の範囲に含められることになる。 
 また、従業員家族を含めて実施した場合でも、かりに業務に関連なく支出したものであれば、それは本来従業員等が負担すべきものを法人が代わって負担したことになるので給与として認定課税されることになる。
 このたびの取扱いは、企業等が従業員の慰安旅行やレクリエ−ションの一環として万博を見学させる場合の「入場券の購入費用」や見学のための交通費や宿泊費については、「福利厚生費」として取扱うことができ、しかも従業員家族を含めて実施した場合でも同様の扱いになるとされている。 このことは、まさに万博支援のための税務上の優遇措置といえよう。
V、活用のポイント
 愛知万博(愛、地球博)が3月25日に開幕されたが、万博のための高速道路の建設費7500億円、会場建設費1350億円等巨額の税金が投入され開催自体を批判する声もあるなか、やはり21世紀初の国際博覧会である大イベント。 国をはじめマスコミ等は万博成功のために各界多方面にわたって理解と協力を得るなか、税務の側面からも万博支援のためいくつかの税務上の措置が手当てされている。 その一つが、入場券の購入費用と慰安旅行に対する税務上の“優遇”措置(平成15年6月20日付の事前照会に対する国税庁の回答)である。 多くの批判があるにせよ華やかに開幕した「愛、地球博」行かなきゃ損と思うのは協会関係者だけでしようか。 法人等の販売促進目的のため、社員等の福利厚生目的等の側面からも有効に活用して頂き、世紀の一大イベントの成功を願うものです。
 
自己株式の売却と物納の課税上の留意点
2003/11/11
 平成13年10月に施行された商法改正で解禁された自己株式の取得(いわゆる金庫株の取得)は、最大限に活用すれば非上場会社である中堅、中小企業にも財務内容の改善、事業承継対策及び相続税の納税対策問題等に大きなメリットがあります。 相続対策を考える上で金庫株に際して、発行法人が相続人から自己株式を購入すれば、相続人に対してみなし配当課税の問題が生じる。この問題を解決するには物納制度の利用が有効である。
T.制度の概要
 平成13年6月の商法改正において、原則として取得することができなかった自己株式は、原則としてその目的を問わず、定時株主総会の決議を経て次の定時総会終結の時までに買い受けることができる株式の種類、総数及び取得価額の総額を定める(商法210条1項、 2項1号)と規定している。
 また、その買い受けた自己株式は、保有期限の制限がないため、継続して保有することができる。 いわゆる金庫株の解禁によって、企業の自社株買いが活発に行われるようになったのは周知のとおりです。 これは大企業のみならず中堅・中小企業にとっても以下のような大きなメリットがあります。 
 @企業の組織再編成のための機動的な利用 
 A敵対的企業買収の対抗策として利用
 B株式市場の安定化  
 C企業年金への拠出・運用手段の多様化
 D非上場会社における相続対策に利用等 
 また、相続税対策を考える中堅・中小企業の創業者にとっても,以下のようなメリットがあります。 
 @事業後継者への経営権の効果的な委譲
 A相続資産の組換えで将来の対策が容易
 B相続税の納税資金の確保
 C物納の利用等
 本稿では、自社株を活用した相続対策としての物納について検討したい。
U.売却に応じた株主の税務
 法人株主、個人株主ともに自己株式の相対取引に応じた場合、その買い受けに際して交付された金銭等は,資本等の払戻部分と利益の分配部分からなるものとみなし、交付金銭等の金額が、発行法人の取得資本等金額を超える部分の金額は、みなし配当所得となります(法法24条1項5号、所法25条1項5号)。 
 また、交付金銭等の金額からみなし配当相当額を除いた金額と、株主の帳簿価額との差額が譲渡所得となります(法法61条の2、措置法37条の10)。 このように相続対策として、生前の段階で発行会社に自社株を売却し、将来の相続税の納税資金に備える手法が実際に行われているが、その際株式の譲渡所得として26%( 所20% 、住6%)の税金が分離課税される。 また、買い取った発行会社が減資や利益消却をすると、その課税関係はみなし配当として総合課税されるため、その相続人が高額の所得者の場合は、最高税率50%の過重な負担になることに留意しなければならない。  
V.非上場株式の物納      
 非上場株式の物納は、換金性がないため原則認められませんでしたが、他に物納適格財産がなければ、物納収納後に確実に買戻しをする者(発行会社)からの買戻予定計画書と有価証券売払申請書の提出があれば認められるようになりました(物納等有価証券の取扱要領の一部改正について、財理第2617号、平成14年7月8日)。 これにより非上場株式の物納要件及び取扱いの明確化を図った。
 よって、相続後に相続人が自己株式を物納し、物納された株式を発行会社が買い取って減資又は利益消却すれば、物納による資産の譲渡は非課税とされている(措法40の3)ため、一切課税関係は生じません。
W.活用のポイント
 以上のように、生前の段階で発行会社に自社株を売却する手法は(自己株式の相対取引に応じた場合)売却に応じた株主等に課税関係が生じるので、相続後に自社株を物納し、物納された自社株を発行会社が買い取る手法のほうが得策かと思われます。 しかし、非上場株式の物納は他に物納適格財産がない場合に限られますので、相続財産中に物納適格な土地等があるとこの手法はとれませんので注意が肝要です。 そして、この対策で最も重要なことは発行会社が相続時の自己株式の買取資金を用意しておくことです。 そのために資金対策として、事前に法人契約の生命保険の活用も有効な手段といえます。
 
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